CASE#1

秋田県 男鹿市
男鹿市からのまちづくりの挑戦

Design 街をデザインする Action 行動の具現化

男鹿から吹く共創の風〜男鹿市まちづくりサミット〜

秋田県男鹿市からスタートした「Co-design Program(以下CDP)」。これまで、稲とアガベ代表の岡住修兵さんとデザインファームKESIKI代表の石川俊祐さんを中心に、男鹿のまちの理想形を描いてきました。

そして、2025年2月、地域活性化をめざすまちづくりの取り組みについて共有する「わたしたちのまちづくりサミット」が、秋田県の男鹿市民ふれあいプラザ「ハートピア」で開かれました。岡住さんの呼びかけで、全国から70人以上の起業家や上場企業の関係者が集まり、プレゼンテーションや意見交換を行ったこの取り組み、まさにCDPのアクションの第一歩と言えるその様子をレポートします。

目次

男鹿のまちに起業家が集い、新たなローカルチャレンジを模索する

2025年2月、秋田県男鹿市で2日間にわたり「わたしたちのまちづくりサミット」が開催されました。男鹿で行われるのは2023年3月以来となり、その時と同様、岡住さんが率いる「稲とアガベ」、三菱地所、三菱地所設計の3社が協働し実施されるイベントとなります。

まちづくりには、少子高齢化、環境問題、防災、経済活性化など多くの課題があります。CDPでも何度も議論を重ねてきたとおり、男鹿もそんな課題を抱えるエリアとして例外ではありません。そんな男鹿の抱える課題を解決する旗手として、全国でも注目されているのが稲とアガベであり、岡住氏です。本サミットは、岡住氏の呼びかけに呼応し、全国から70人以上の起業家が集まり開催されました。

​​​「ローカルでは起業家や地場産業による新しいアクションが生まれていますが、それぞれが個別の取り組みになりがちです。その個々のベクトルの『線』をつなげ、『面』の取り組みに拡大することができれば、地域に対する、より大きなポジティブインパクト創出につながると考えています。それぞれの取り組みを個別のものとするのではなく、繋ぎ合わせ、相乗効果を生み出すことで、日本のローカルへポジティブなニュースを届けたいと考え、今回のイベントを企画しました」

岡住氏はまちづくりサミットの目的を、このように語ります。その言葉どおり、男鹿のまちづくりには、地域間や事業領域など、垣根を超えた多くのプレイヤーが関わっており、新たな賑わいの創出、関係人口の拡大につながる取り組みが数多く生まれています。

男鹿をそんな共創起点とすべく、意欲に燃える起業家たちが、会場となった男鹿市民ふれあいプラザ「ハートピア」に集い、自身の事業や開発中のソリューションなどについてプレゼンテーションを行いました。

会場となった男鹿市民ふれあいプラザ「ハートピア」

おりしも大寒波が到来し、雪が降りしきる中、始まったまちづくりサミット。そんな寒波をものともしないほど、会場は共創の熱気に包まれてスタートしました。岡住氏が牽引する本サミット、どのような議論がなされ、どのような協業の可能性が生まれたのでしょうか。

ローカルインパクトを生み出すための最良の場として

岡住氏の話にあるように、サミットでは地方の課題解決をビジネスでどう実現するか、その糸口としての「事業者同士の繋がり」を育むことが大きなテーマになります。特に、地域資源や特色を活かしたビジネスでは、資金調達、人材確保、デジタル活用、ネットワーキングなど複合的な観点で検討し、計画性と実現性をもって事業をスタートさせることが不可欠です。また、事業を起こしその地域に新たなムーブメントを創出することが、地域課題の解決と深く結びついてきます。

今回のサミットには、古民家活用事業、飲食事業の開発・運営、自立支援特化型のデイサービス事業、モビリティ開発や地方企業のコンサルティング、アップサイクルコレクティブ事業など、多種多様な起業家や上場企業の担当者がおよそ70名集い、それぞれの事業説明と地域創生や新たな事業創出への熱い思いを語りました。

豚骨ラーメンの「一風堂」などを展開する「力の源ホールディングス」の山根智之社長兼最高経営責任者(CEO)も参加者の一人。地方創生にも力を入れている同社の取り組みの一つが、稲とアガベと手を取り合ってスタートした男鹿でのラーメン開発事業でした。

「力の源ホールディングス」の山根智之社長兼最高経営責任者(CEO)

「岡住さんとの出会いは2023年1月でした。男鹿は人口減少の一途を辿っていること、高齢者比率が非常に高いこと、まさに地方が抱える最たる課題に直面しているのが男鹿だと聞かされました。そんな中で、稲とアガベの酒蔵は輝いており、一燈照隅とはまさにこのことだと実感したんです。彼の事業を目の当たりにし、男鹿でのラーメン開発事業に協力することにしました。

とんとん拍子で話は進み、2023年8月男鹿駅前にラーメン店『おがや』を開業することができました。その後も、月1回店舗で一風堂のエプロン商品を提供したり、袋麺の開発販売をしたりなど、絶え間なくチャレンジをしています。そして現在、稲とアガベのお酒を我々の海外店舗で提供する計画を進めています。これは、ローカルからグローバルへ、つまり私たちが掲げる造語『グローカル』へという計画の一端です」

ラーメン店「おがや」はローカルナイト会場のひとつ。

こう山根氏が語るとおり、稲とアガベと力の源ホールディングスの取り組みは、地域創生を叶えるためのひとつの理想形と言えます。そして、まちづくりサミットは、こういった形の起業家同士のコラボレーションを生み出す最良の場なのです。

起業家たちの共創が萌ゆるまちづくりサミット

また男鹿のまちづくりサミットのおもしろい点は、「ローカルミーティング」と「ローカルナイト」と呼ばれる、参加者間のコミュニケーションの時間が設けられていることにあります。

ローカルミーティングは、参加した起業家や企業の担当者を​​チーム分けし、各々がテーマを設け、それに対する​​ディスカッション​​を行​​い発表する​、というもの。「シニア世代へ、ポジティブな自己認識や行動変容を促すためにはなにが必要か?」や「(参加者である)金楠水産の事業をコンサルティングする」など、各チーム思い思いのテーマ設定を行い、そのテーマに基づきどのような事業が必要か、どのようなまちづくりが必要か、を​​議論・​​発表しました。プレゼンテーションでの一方的なコミュニケーションから、意見交換の場​​を設けることで​​​​、より深い議論を交わすことができます。

また「ローカルナイト」​は、男鹿駅周辺の居酒屋や稲とアガベが立ち上げたレストランやバーを会場として行われる懇親会。地元の料理が振る舞われる居酒屋をはじめ、参加者である起業家兼シェフの料理が振る舞われるバー、スペシャルメニューが用意されたラーメン店「おがや」など、各会場趣向を凝らし、参加者はより自由闊達な交流を楽しみました。

稲とアガベが2024年12月に開業したバー「シーガール」もローカルナイト会場のひとつ。起業家として参加したtetoteto代表でシェフでもある井上豪希さんの料理が振る舞われた

そんな交流を経て、まちづくりサミット終了間際には、「昨日のアイデアぜひ進めましょう」「改めてミーティングしましょう」という声も会場内​​から​​​聞こえてきました。
まさに岡住氏が話していた人と人を繋がることで生まれる「面」としての取り組み、男鹿を起点として地域が生まれ変わるきっかけを得たのではないでしょうか。男鹿市まちづくりサミットは、地域創生にとって不可欠なローカルインパクト、そんな共創の若芽が至るところで芽吹くイベントという印象を受けました。